■労働時間
3 労働時間とはどういう時間か、具体的事例を踏まえ、教えてください。
3 「労働時間」とは、一般的に、使用者の指揮監督のもとにある時間をいい、必ずしも現実に精神又は肉体を活動させていることは要件とされません。 したがって、例えば、貨物取扱いの事業場において、貨物の荷扱係がトラックの到着を待っているいわゆる待機の時間帯や、トラックに運転手が2名乗り込み交替で運転に当たる場合に、実際に運転に従事せず助手席で休息又は仮眠している時間帯なども、いずれも労働時間と解されています(昭33.l0.11収第6286号)。この事例のような待機の時間を一般に「手待時間」と呼ぴ、「手待時間」が労基法第34条の「休憩時間」と違うのは、前者が使用者の指揮監督のもとにあるのに対し、後者が労働者はその時間の自由利用を保障されている点にあります。したがって、休憩時間とされている時間帯に来客当番をさせられていれば、実際に来客がなくとも、労働時間となります(昭23.4.7基収第1196号、昭63.3.14基発第150号・婦発第47号)。
ここで、使用者の指揮監督下にあるか否かは、明示的なものであることは必要でなく、現実に作業に従事している時間のほかに、作業前に行う準備や作業後の後始末、掃除等が使用者の明示又は黙示の指揮命令下に行われている限り、それも労働時間となります。
以下、労働時間か否か問題になることの多い事例を示します。
(1) 教育、研修に参加する時間 労働者が使用者の実施する教育、研修に参加する時間を労働時間とみるぺきか否かは、就業規則上の制裁等の不利益な取扱いの有無や、教育・研修の内容と業務との関連性が強く、それに参加しないことにより本人の業務に具体的に支障が生ずるか否か等の観点から、実質的にみて出席の強制があるか否かにより判断されます。
「労働者が、使用者の実施する教育、研修に参加することについて、就業規則上の制裁等の不利益な取扱いによる出席の強制がなく、自由参加のものであれば、時間外労働にはならない」(昭26.1.20基収第2875号)とする解釈例規があります。 .また一定の資格を得ることが昇進等の条件となっているような場合に、使用者がこれらの資格の取得に資するために行う教育研修に参加することについても、これに参加することが強制されていない限り労働時間とはいえません(昭33.l0.l0基収第6358号)。
(2) 安全衛生教育安全・衛生委員会の会議の時間 .安全衛生教育の時間については、労働安全衛生法第59条及ぴ第60条の安全衛生教育は、労働者がその業務に従事する場合の労働災害の防止を図るため、事業者の責任において実施されなければならないものであり、その実施に要する時間は労働時間と解されます(昭47.9.l8基発第602号)。 労働安全衛生法第17条、第18条又は第19条に定める安全委員会、衛生委員会等会議の開催に要する時間は労働時間と解されています(昭47.9.18基発第602号)。これらの会議は、しばしば所定労働時間外に開催されることがあるが、当該会議が法定労働時間外に行われた場合には、時間外労働として取り扱わなければなりません(前掲解釈例規)。
(3) 健康診断の受診時間 これについては、一般健康診断の場合と特殊健康診断の場合とに分けて考えなければなりません。一般健康診断は、一般的な健康の確保を図ることを目的として事業者にその実施義務を課したものであり、義務遂行との関連において行われるものではないので、その受診のために要した時間については、当然には事業者の負担すべきものではありませんが、他方、特定の有害な業務に従事する労働者について行われる健康診断、いわゆる特殊健康診断は、事業の遂行にからんで当然実施されなければならない性格のものであり、その実施に要する時間は労働時間と解されます(昭47.9.18基発第602号)。
(4) 作業服への更衣・安全靴の着用等の時間 作業服の着用と、社内の更衣室で着替えることの2点を義務付けた場合は、実作業に就いていない時間であっても「使用者の指揮命令下」にある時間として、労働時間となります。従って、着替えに要する時間も労働時間となり、始業時刻前はもちろん、終業時刻後の着替えに要する時間に対しても、賃金を支払わなければなりません。 ただし、着替えに要する時間が労働時間に当たらない場合もあります。例えば、任意の服装による勤務を認め、希望者のみに制服を貸与している場合に、社外で制服を着用されると企業イメージが損なわれることなどから、社内に限り制服の着用を認め、着替えを社内の更衣室で行うこととしているケースなどが考えられます。 こうした場合は、制服を着用することが義務付けられていない以上、着替えに要する時間が「使用者の指揮命令下」に置かれた時間とは認められず、労働時間とはならないと考えられます。
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4 地域社会への奉仕を目的に最寄り駅周辺の清掃を、始業前30分間行っていますが、このようなボランティア活動の時間についても、労働時間としてカウントしなけれぱならないのでしようか。
4 本来の業務とは関係なく、職務遂行上必要な作業でもない作業に要した時間は、一般的には労働時間ではないと考えられがちですが、このような場合であっても使用者の指揮命令に基づいて行われているものであれは労働時間となります。 質問のケースで、奉仕活動として行う清掃が、例えば使用者の方でいくつかのグループに分けて、そのグループごとに交替で行うような場合、その奉仕活動への参加が強制されているものと考えられます。このような場合は労働時間としてカウントしなければなりませんが、地域社会への奉仕活動が労働者個人のボランティア活動として、自発的に行われているもので、なおかつ、参加も自由とされているような場合には、使用者の指揮命令に基づく労働とは考えられませんから、その活動に要する時間は労働時間とはみなされません。
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5 営業社員に携帯電話を持たせ、緊急時に連絡を取れるようにしている場合事業場外のみなし労働時間制の適用は可能でしようか。
5 労基法第38条の2では、労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合であって、労働時間を算定しがたい場合には、所定労働時間労働したものとみなすとしています。
この事業場外のみなし労働時間制は、(1)労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事する。(2)そのために使用者の具体的な指揮命令が及ばず、労働時間を算定することが困難である。の両方を満たす場合に適用されます。営業社員の業務が、(1)と(2)の両方を満たす場合には、事業場外のみなし労働時間制を適用することができます。(1)と(2)を満たしているか否かの判断基準について、以下に示すような場合には、事業場外で業務に従事する場合であっても、使用者の具体的な指揮監督が及んでいるとして、みなし労働時間制の適用はありません(昭63.1.1基発第1号) ①何人かのグループで事業場外労働に従事する場合で、そのメンバーの中に労働.時間の管理をする者がいる場合 ②事業場外で業務に従事するが、無線やポケットベル等によって随時使用者の指示を受けながら労働している場合 ③事業場において訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けた後、事業場外で指示どおりに業務に従事し、その後事業場に戻る場合。
質問では、営業社員に携帯電話を持たせ、緊急時には連絡を取っているとのことですが、この場合、携帯電話の使用方法によっては前述の②に該当し、みなし労働時間制の適用はできないと考えられます。 具体的には、例えば、携帯電話を使って使用者が随時外勤の営業社員に指示を与えながら業務を遂行している場合はみなし労働時間制の適用はできないと考えられます。一方、携帯電話を緊急時の連絡にしか使用していない場合には、使用者の具体的な指揮命令が及んでいないと考えられ、みなし労働時間制が適用できることになります。
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6 社員にゲーム用ソフトウェアの創作を行うている者がいますが、これらの業務に従事している労働者に対して、裁量労働制を導入したいと考えているのですが、どのような点に留意したらよいでしようか。
6 みなし労働時間制の一つである「裁量労働制」とは、仕事の仕方や時間配分等について、使用者が細かく指示するのでなく労働者本人の裁量に任せるというもので、労使協定で定めた対象労働者を協定で定めた業務に就かせた時は実際の労働時間にかかわらず、協定で定めた時間労働したものとみなされます。
現在、裁量労働制には、専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制の2つがあります。
質問のゲーム用ソフトウェアの創作の業務は、業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある専門業務型裁量労働制の業務とされています。専門業務型裁量労働制の導入に当たっては、
①対象業務 ②業務遂行の手段や方法、時間配分等に関し労働者に具体的な指示をしないこと ③労働時間の算定については労使協定によること ④みなし労働時間 ⑤有効期間 ⑥労働者の健康福祉を確保するための措置 ⑦苦情の処理に関する措置 ⑧⑥及び⑦の記録を協定の有効期間中及び期間満了後3年間保存することについて、締結し、所轄の労働基準監督署長に届け出ることが必要です。
なお、専門業務型裁量労働制の対象となる業務は、労基法施行規則第24条の2の2及び厚生労働省告示第354号により19の業務が対象となっています。
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