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労働基準法・就業規則Q&A 退職

■退職
23 当社の従業員が就業規則上の懲戒解雇に該当する不正行為を行いました。しかし、懲戒解雇の場合には退職金が不支給となるものの、これまでの本人の会社に対する貢献度なども考慮したうえで、退職願の提出を強く求めたところ、本人も納得して退職届を提出しました。しかし、会社の申し出はすでに本人に選択の余地がないとも思え、解雇の手続きを取らず、本人の意思による退職として取り扱っていいのか疑問です。
23 結論から言えば、質問のケースは合意退職とみなされますので、原則として解雇の問題は生じません。しかし、退職願が出されてさえいれば合意退職が成立していると認められるかというと、必ずしもそうではありません。

昭和45年4月14日横浜地裁判決の日本電気事件では、会社から強く退職願の提出を迫られた原告が、その意思がなかったもののその場を取りつくろうため退職願を出した件について、本人の自由意志によらないことから合意があったとはみなされないとしています。
このほか民法第95条の錯誤があった場合の意思表示は無効とされていますし、同法第96条は詐欺や脅迫の状態のもとに行われた意思表示については後刻これを取り消し得ることを定めています。
しかし、これらはいずれも合意退職の成立について言及しているのであって、本来、被解雇者の意思をまったく考慮しない解雇とは別個の問題といえます。

したがって、質問の場合も合意退職が成立していないと認められる場合に、改めて解雇の措置に出られればよいのであって、会社からの申し入れがあったとはいえ、本人の自由意志による退職に関する合意があったとみられる以上、労基法第19条や第20条の問題が生じることは原則としてないといえます。


24 当社の定年年齢は60歳となっているのですが、定年間際の社員が業務中に怪我をしてしまいました。定年は雇用契約の満了であり、解雇ではないと聞いているのですが、そうすると労働基準法上の解雇制限の適用もないと考えてよいのでしようか。
24 労基法第19条は、「使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間並びに産前産後の女子が第65条の規定によって休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない」と定め、一定の状態にある者の解雇を禁止しています。

しかしながら、同条で禁止しているのは、使用者による一方的な労働契約の解約の意思表示である「解雇」であり、労働者側からする任意退職や労働契約に期間の定めがある場合の期間満了による労働契約の終了等、解雇以外の事由による労働契約の解消をも禁止しているわけではありません。

したがって、労基法第19条の解雇制限の適用があるか否かは、当該労働契約の解消がいかなる事由に基づくものであるかによって判断されることになり、定年年齢到達をもって労働契約の自動的な終了事由として就業規則に規定している定年制の場合には、労働者が定められた年齢に到達することにより、当然に労働契約関係が終了することとなり、労基法第19条の問題は生じません。
しかしながら、一応、定年年齢は定めてはいても、慣例としてその都度会社との話し合いによって定年年齢を延長していたり、あるいは嘱託として再雇用したりしている場合ですと、事情も異なってきます。


25 当社の社員が行先などを誰にも告げずに寮を出たまま戻らず、以来行方が分かりません。解雇として処理して構わないのか、その場合の留意点について知りたいと思います。また、就業規則では「無断欠勤が14日以上に及んだ場合、解雇する」という条項がありますが、解雇ではなく依願退職とするのは問題があるのでしようか。
25 解雇として扱えるかということについては、就業規則に規定がありますので問題ないでしょう。ところで、問題なのは解雇すべき労働者が行方不明であるということです。

解雇とは、使用者の意思表示による労働契約の解除ですから、「隔地者に対する意思表示は其通知の相手方に到達したる時より其効力を生ず」(民法第97条)とされているように、解雇の意思表示が当の相手方たる労働者に到達しなければ、労働契約解除の効果を生じないわけです。

しかしながら、相手方である労働者が行方不明のような場合には、たとえ労働者の住所に配達されても、それによって本人の了知し得るべき状態に置かれたとみることは困難というべきです。したがって、このような場合は民法第97条の2に規定する「公示の方法」によって行うことになりますが、具体的方法としては裁判所の掲示場に掲示し、かつ掲示のあったことを官報及び新聞に最低1回は掲載することとされています。そして、最後に官報もしくは新聞に掲載した日から2週間経過したときに、意思表示は相手方に到達したとみなされることになります。

しかし、依願退職として処理できるのであれば何も公示の方法をとる必要はなく、無断欠勤が続き、会社に何の連絡もしないまま姿を消すということが、労働者の黙示の労働契約の解約申し入れの意思表示ととれないのかということになります。というのも、意思表示は一定の方式を備えた明示の意思表示によらなけれぱ効力を生じないとされる要式行為を除けば、黙示の場合も同一の効果をもつとされているからです。

したがって、質問のケースが労働契約解約申し入れの黙示の意思表示と認められるものであれば依願退職として取り扱って差し支えないということになります。

ところで、個々のケースが労働者による黙示の意思表示と認められるかどうかについては、客観的事情をもとに総合的に判断しなければなりません。その労働者の過去の勤務状況、行方不明になったときの状況、その後の連絡の有無、連絡がとれなくなってからの期間などを考慮して、誰がみても自分から会社をやめるつもりで姿を隠したことが明らかであれぱ、依願退職として処理しても構わないことになるでしょう。

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