デスクに子供の写真はダメですか?(職務専念義務違反?)

2013年11月19日

こんにちは! 酒田の社会保険労務士 村西です。

 

数年前、無料相談の会場で、事務職の女性からの質問事例に次のものがありました。

 

デスクに子供の写真を置いていたところ、上司が来て『仕事場にふさわしくないからしまえ!』と言われました。

釈然としませんでしたが、その場では机にしまいました。

もし、これに従わなかった場合は処分されても仕方がないのでしょうか?

 

うーん。非常に答えづらいです。パソコンのデスクトップとかスマホの待ち受けを子供の写真にしたら・・・? などと思いましたが、労働法としてはどのように考えるべきか?

 

こちらも釈然としないので、調べてみました。

労基法第2条や労働契約法第3条によって、労働者も使用者も『規則を守って誠実に業務を遂行する義務』があります。

今回の『子供の写真』は、このような義務に背く行為といえるでしょうか?

 

デスクを職場として考えてみましょう

仮に、『職場に私物を置かないこと』という規則があったとします。これによって労働者が私物を持ち込むことを実際に禁じ、これに違反したとして処罰できるか否かです。処罰するには『合理的な理由』が必要です。

通常、このような定めをする必要があるのは、複数の労働者が空間やデスクを共有しているとか、機密情報保持の都合など、特別の理由がある場合でしょう。この場合は処罰可能と考えます。

今回この点は不明ですが、そのような事情がないとすれば『合理的な理由』を欠き、処罰することはできないと考えます。

 

机に就いている時間に着目してみましょう

次に仕事のためにデスクに座っている時間について考えてみます。

この時間は、職務遂行中であり、『職務専念義務』があると考えられます。

公務員と違い、民間企業にはこれが明記された法律がある訳ではないのですが、先程の労基法や労働契約法の『職務誠実義務』の中に含まれると考えるのが妥当かと思います。とすると、この義務に背く行為であるとして処罰することはできるのでしょうか?

これに関して参考になると思われるのが【大成観光事件S57.4.13最高裁】で判決理由の補足意見です。

【補足意見】

『労働者の職務専念義務を厳しく考えて、労働者は、肉体的であると精神的であるとを問わず、全ての活動力を職務に集中し就業時間中職務以外の事に一切注意を向けてはならないとすれば・・・(中略)・・・業務と何ら支障なく両立し、使用者の業務を具体的に阻止することのない行動は、必ずしも職務専念義務に違背するものではないと解する。』

ここで言っているのは、就業中に労働組合のリボンを付けることが職務専念義務に反するのか否かです。この意見を読むと職務専念義務に対する裁判所の考えが分かります。

さて、このことから考えても、単に子供の写真を机に置くことをもって処罰することは、やはり無理がありそうです。

 

懲戒処分に必要な要件が揃っているか?

相談者は『処分を受けるのか』という点を心配しています。当然ですが、懲戒処分は会社が好き勝手に行えるものではありません。

○就業規則等に根拠が列挙されているか?

○当該就業規則は労働者に周知されているか?

○非違行為と懲戒処分のバランスは合理的か?

これらの要件が揃っていない場合は権利濫用となる可能性があります。

 

上司の指示の合理性、指示の目的はどうか?

これは、実際に業務に支障をきたすのか否かという問題点になります。

例えば、大きな写真を何枚も置いているとか、誰が見ても極めて不快である、又は会社入口の受付に置いているなど、実際に職場秩序を害するような場合は、業務に支障をきたすといえると思います。

上司は『仕事場にふさわしくない』と言いますが、普通の事務員である労働者が、職場で自分の机に子供の写真を置くことを『業務に支障をきたす』とまでは通常考え難いのではないかと思います。

また、他の同僚についても同様の指示があるのか否かも重要なポイントとなりそうです。

他の同僚が同じように写真等の私物をデスクに置いてある状況であれば、『なぜ、相談者だけが注意を受けるのか?』 

これについて上司の口から合理的な説明がなければ、その上司の指示の目的は不当なものである可能性もあるのでは?

 

パワハラという言葉をご存知でしょうか?

上司が部下に対し、指導の範疇を超えた不利な扱いをすることは『パワーハラスメント』になる可能性が出てきます。

 

パワハラが極端にひどくなると最後はどうなるか?

仮にこの労働者が上司の不当なパワハラのため心の病に罹患し、最終的には自殺に至ってしまった場合、上司だけでなく会社の安全配慮義務違反も問われ、遺族等から損害賠償請求を受ける可能性もあるでしょう。

 

労災認定が認められることもある

比較すべきとは思いませんが、【名古屋南労基署長(中部電力)事件H19.10.13名古屋高裁】というのがあります。

主任に昇格した労働者を上司が『主任失格』とか『お前なんかいてもいなくても同じ』などと叱責し、さらに家族を愛する労働者に対し、複数回に渡り結婚指輪を外すよう命じ、直後にこの労働者が自殺したもので、労基署が労災不認定としたところを、裁判所がこれをひっくり返して労災認定としました。

 

あまりこだわるべきではないのでは?

机に子供の写真を置くことで、業務に支障がない場合は、法律的には処分される心配はないでしょうが、上司とうまくやっていくには、釈然としない気持ちを抑えて、我慢したら? と思います。

上司も虫の居所が悪かっただけかも知れないし・・・。

 

 

 

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コメント / トラックバック2件

  1. ニゴロデザインHPスタッフ より:

    いつも大変お世話になっております。二ゴロデザインの小野です。
    こちらの記事も、面白く読ませていだたきました。
    法的に解説して下さっているのも面白いですし

    「上司も虫の居所が悪かっただけかも知れないし・・・。」

    こういう、人間的な余裕は、雇ってもらう側も雇う側も必要ですね。

    子供が小学校のときは、何か(一斉下校など)あると
    携帯などに連絡きたりしましたが、今の職場は
    とても理解があり感謝しています。

    話がそれましたが・・・。

    それでは、これからも、楽しみにしております!

    • あおば労務管理事務所 村西 より:

      小野様、コメントありがとうございます。
      そうですね、仕事関係とはいえ、感情ある人間同士ですから。
      相談者の方はかけがえのない我が子を上司に否定された気になったんでしょうね。
      小野様の職場はワークライフバランスに理解があるとのこと。
      人間的余裕のある人と仕事ができるって幸せですね。

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