内定と契約、内定取り消しと解雇はどう違うか?

2013年11月20日

こんにちは! 酒田の社会保険労務士 村西です。

 

さて、今回は会社ではなく労働者でもない方の事例です。

 

大学4年生です。

入社予定の会社から研修を受けるよう言われました。

受けなければなりませんか?

 

新卒採用する会社にとって、入社してからスムーズに仕事に慣れて行ってもらうため、入社前の研修を受けて欲しいという事情はよく理解できるところです。また、これは新入社員のためでもあります。

ただ、これを法的に義務付けまでできるかといったところに課題がありそうです。

 

雇用契約関係はいつからか?

当然、入社してからであれば、会社は業務命令として研修を受けることを強制できる訳ですが、まだ入社前ですし、相談者の方は卒業旅行の予定があり、日程的に研修を受けられないという事情があります。

とはいえ、採用内定通知をもらっていて、さらにこれに対して入社誓約書を会社に提出しているので、契約関係は開始されたと考えるべきなのか?

仮にそうだとすれば、会社は研修参加を強制できるのでしょうか?

 

研修の目的は何か

さて、強制できるか否かのその前に、仮にこの相談者が研修を蹴って旅行に行ったときの本人の不利益を考えてみましょう。

まず、なぜ企業はこの様な研修を受けさせたいのか考えなくてはなりません。

それは、前述したとおり、入社後にスムーズに仕事に慣れてもらうためであったり、同期入社の人間関係を築くためであったり、業務知識やスキルを身につけてもらうためであったりと、少なくとも一方的な会社の利益のためだけの恣意的な目的ではないはずです。

 

研修を受けなかったときの不利益

また、他の新入社員がこの研修を受けて入社することを考えれば、入社のスタート地点から後れを取ることになる訳です。しかも、特に小さな会社であれば『初めから会社の言うことを無視した社員』といった見方をしてしまうのは当然ともいえます。このような社員を自分の部署にぜひとも欲しいと思う上司はそう多くないでしょう。

 

強制できるかどうかは重要か?

4年間も大学に通って、厳しい就職戦線を戦った果てにようやく手に入れた内定通知を数日間の『旅行』のために失ってしまう可能性すらあります。

会社が相談者に内定を出した半面、誰かが涙を飲んでいるのです。強制かどうかなどを考えるまでもなく研修を受けるべきでしょう。

また、新卒入社で失敗してしまうと、坂道を転がり落ちるように、不安定な人生になってしまう可能性があります。年金の保険料だって払えなくなるかも知れません。

このような若年者をあえて雇用する企業に国が助成金さえ出す時代なのです。

 

採用内定の法的な考え方

卒業旅行から年金まで心配することもないでしょうから、話を戻しましょう。

採用内定の法的効力です。

結論から申しますと、採用内定通知は契約と同じです。

ただし、『始期付解約権留保付』とされています。ですから、細かいことは抜きにしても会社と相談者は、既に契約関係にあるのです。

かつては、採用内定の法的性格については、契約締結の過程に過ぎず、採用内定は内定者も会社も拘束しないとする見解があったようですが、現在は『内定取り消し』をめぐる判例の集積によって次のように考えられています。

○求人募集は労働契約の申し込みの『勧誘』

   ↓

○応募又は入社試験の受験は契約の『申し込み』

    ↓

○内定通知は契約の『承諾』

 

『承諾』の時点で契約が成立しているので、会社はこれを原則取り消すことができないということになります。

 

”始期付解約権留保付”とはなにか?

では、先程の『始期付解約権留保付』とは何でしょうか。

解釈例規では、『就労始期付解約権留保付雇用契約』といっています。法律用語はとにかく長くて嫌になるのですが、これは次の意味です。

 

『始期』→労務提供の開始時期や、賃金の発生時期が契約したときではなく、卒業した時期からこれらが始まることを約束しているといった意味。

 

『解約権留保』→ 万が一、大学を卒業できなかったとか、内定通知を出したときには会社が知ることができなかったことが起こったときや、その事実が分かったときは、内定を取り消して解約しますといった内容を包含しているという意味。

 

結局、研修参加は強制できるのか?

結論から申しますと、これはできないでしょう。

『始期付』である以上、契約は済んでいるけども、会社はこれに基づく研修(労務提供)を義務付けることができないということです。

予定する就労の始期が到来していないということです。

一方では『始期付』とは別の学説もあるようですが、類似のケースで実際の裁判例があります。

これは旅行に行きたくて会社を訴えた訳ではないのですが、その事例では次のように判示されています。

『使用者が、内定者に対して、本来は入社後に業務として行われるべき入社前の研修等を業務命令として命ずる根拠はない。』(平成17年1.28東京地)

 

会社は内定取り消しができるか?

では次に、研修に参加しなかったことをもって、会社が内定を取り消すことができるか否かです。

会社は、初めからスケジュールとして組み込まれていたものを、実施時期などが確定していなかったために、内定通知の段階では伝えていなかったのではないかと思います。

内定通知の時点で、研修参加を条件にしていれば問題なかったのでしょうが、直前になって、内定者が卒業旅行の予定を組んでしまってから研修を案内したと思われます。この点は、会社にも確かに落ち度はあるように思え、内定者の主張も理解できなくもありません。

この場合、卒業旅行を優先して、研修を受けない内定者に対して会社は『見込み違い』などの理由で内定を取り消すことができるのでしょうか?

つまり、『解約権』が留保されているので、これを行使することが認められるでしょうか?

 

内定取り消しは解雇と同じくらい困難

有名な『大日本印刷事件』という最高裁判所の判例があります。この事案では次のように判示されています。

『採用内定の取消し事由は、採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取り消すことが解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ、社会通念上相当として是認することができるものに限られる。』(昭和54.7.20最判)

実は、この『客観的に合理的と認められ、社会通念上・・』云々というフレーズは、解雇権濫用と同じフレーズなのです。

もともと、裁判所が言ったものですが、労働基準法の条文にこのフレーズが入って来たことがありました。現在は労働契約法というものができて、その第16条に収まっています。

いずれにしても今回、『研修不参加』程度の理由で解雇相当みたいなことが認められることはないでしょう。

 

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