円満退職したい人は、年次有給休暇を悪用しないでください

2013年11月21日

こんにちは! 酒田の社会保険労務士 村西です。

 

年次有給休暇(以下『年休』という。)は、労働基準法で非常に強く保護されている労働者の権利で、多くの経営者の悩みの種となっています。

突然退職を言い渡し、引き継ぎを拒み、出社してこない労働者に対しても年休を与えなければならないのでしょうか?

 

自動車販売会社でのできごと

この会社は営業マンが2人います。このうちAはメカニックとしょっちゅう言い争いを起こします。

この日も車検の完成が遅いとのことで言い争いをしていました。そして止めに入った社長に対して、Aはこう言い放ちました。『ずっと我慢してきたんだ!こんな会社辞めてやる!』

そして、次の日から出社してきません。車検や修理の予定は入っているので、引き取りや納車で残るスタッフは休憩も取れない状況です。

数日経って、社長の元にAから封書が届きました。退職届の様です。

そこにはこう書いてありました。『○月○日から○月○日まで年休を取って退職する。』

引き継ぎもせず、しかも繁忙期に、会社にもお客様にも迷惑を掛けて突然いなくなった奴に、なんで給料を払わなければならないんだああ・・・!!と、社長は怒りを抑えきれない様子でした。

 

年休の時季指定は原則拒むことができない

多くの就業規則には『年休は請求に応じて与える』などとなっていますが、実はこれ、法的には正確な表現ではありません。

意外に知られていませんが、年休は、請求と承認といった概念で成立するものではないのです。

正確な言い方をすれば、労働者は形成権としての権利の行使時季を『指定』することで効果を生ずるという考え方になります。

これを『時季指定権』といいます。

これに対して、使用者としては『時季変更権』が認められています。

これは、労働者の行った時季指定に対して、『今月は困る、来月にしてくれ』という具合に、指定の時季を変更する権利です。ただし、この権利行使は『事業の正常な運営に支障がある場合』として限定されています。

 

事業の運営に支障があった!

今回、Aの取った行動は、仕事を放棄したことにほかならず、会社やお客様に対して迷惑を掛けたという点では事業に支障がありました。

しかし、この場合でも『要員不足』という理由は認められません。

確かに、『うちはぎりぎりの人数でやっているから、常に事業に支障がある。』というのでは困ります。

しかし、今回の自動車販売会社のケースでは、このことと時季変更権の行使は別けて考える必要がありそうです。なぜなら、会社が行使できる権利は、あくまで『時季』を『変更する』権利であって、『承認しない』とか『取り消す』権利ではないからです。

 

年休を認めないとした場合どうなるか?

実際に会社が『承認しない』とした場合、法的な扱いはどうなるのでしょうか?

当然、法的には『時季を変更する』ことしかできない訳ですが、『いつに』変更するのかを予め指定しないといけないのかという論点です。

『使用者が時季変更権を行使した場合、使用者は必ずしも一方的に特定の日を指定しなければならない訳でなく、一定範囲の時季を指定すれば足り、労働者の了解があれば指定しなくても違法ではない。』(東京地判昭50.5.29)

確かに、労働者は指定した日に休暇が欲しい訳で、それ以外の日を指定されても・・・ってことになりますよね。それなら次の機会に残して置いてもいい訳です。

 

時季の指定も変更も退職後の日にできない

さて、結論です。そもそも年休は、労働義務のある日において当該義務を免除する制度です。当然ですが、労働義務の無い日については免除できません。

すなわち退職後の日において年休を当てることができないのです。

先程の、時季変更権を行使するとして、労働者の指定に対してこれを変更できる時季(例えば来月とか)はいつがあるかということを考えたときに、もう変更して当てる時季がないということにお気づきになるでしょう。ですから退職時の年休は、事業に支障があろうがなかろうが、時季変更権の行使が不可能なのです。

 

就業規則の『○日前までに申し出ること』との関係は

この会社には就業規則があります。その中では、10日以上前に申し出ることとなっていますので、これによって拒むことができるようにも思えます。

しかし、労働基準法第39条は強行規程ですので、就業規則や当事者の意思によって変更されません。

就業規則にこの様な記載があるのは、時季変更権行使の合理性を強めるためですので、今回はこれによって時季指定を拒むことはできません。

ただ、当日になって時季指定があったときは、会社が判断する時間がないので、さすがに拒むことはできます。 

 

退職時に消滅した年休を会社が買い上げることはできる

自己都合退職の場合、労働者の指定した退職日に実際に残っていた年休は退職と同時に消滅します。この消滅した年休をどう扱うかについては当事者の自由です。

ですから、これを買い取ることも、特段構わないのです。

ただし、会社の都合で一方的に強制することはできませんし、買い上げの『予約』はできないことになっています。

 

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