こんにちは! 酒田の社会保険労務士 村西です。
60歳未満の場合、親族のうち配偶者の被扶養者になれるとすると、国民年金の「第3号被保険者」となることができます。給与が13万円程度より低い人の場合は、併せて「第3号被保険者」についても説明しておくと親切でしょう。
「第3号被保険者」は、妻が厚生年金に加入していれば、もちろん男性でも可能です。
また、退職者が60歳以上、つまり定年年齢(60歳)以後の退職のケースでは、親族の健康保険の被扶養者となることができる年収は180万円未満になります。したがって、被扶養者になれるか否かの基本手当日額の分岐点は5千円であり、基本手当日額が5千円になる退職前6カ月間の平均給与は約330,000円になります。
60歳以上の退職者の場合は、親族の健康保険の被扶養者になれる年収基準は60歳未満の退職者に比べて、そのハードルは低くなっています。ただし、60歳以上の場合は、「第3号被保険者」にはなれません。国民年金の保険料納付義務がないからです。
親族の被扶養者になれないとき
親族の健康保険の被扶養者になれない場合は、退職後は会社を通じて加入していた健康保険を「任意継続」するか、「国民健康保険」に加入するかの二者択一になります。
任意継続と国民健康保険
「任意継続」とは、退職前に健康保険の被保険者期間が継続2カ月以上あれば、資格喪失後20日以内に退職前に加入していた健康保険の保険者(ここでは協会けんぽ)に申し出ることによって、最大2年間まで「任意継続被保険者」になれるという制度です。
一方、国民健康保険は、市区町村で運営する医療保険で、会社を通じて加入する健康保険の被保険者にならない(かつ被扶養者にならない)住民が加入します。
健康保険の「任意継続」と「国民健康保険」では、その給付には大きな差はありません。一般的な診療の窓口負担は、いずれも3割負担で、健康保険と国民健康保険の給付面の大きな違いである「傷病手当金」も、任意継続被保険者の「傷病手当金」はすでに廃止されています。
つまり、給付面では両制度の差はほとんどなくなっています。
保険料負担の差
両制度に給付面の差がほとんどないという前提で考えると、次は保険料負担の差を考える必要が出てきます。
国民健康保険の保険料は前年の所得を基礎として決定されます。計算方法は市区町村によって異なりますが、前年の所得が高かった人は、たとえ退職して経済的に苦しくなっても保険料は高額になる可能性があります。また、国民健康保険には「被扶養者」という制度がなく、世帯単位での加入となります(健康保険の被保険者およびその被扶養者は適用除外)から、他に国民健康保険に加入すべき家族がいれば、たとえその人には収入がなくても最低限の定額負担が生じます。
一方、任意継続被保険者の保険料は、退職時の標準報酬月額と保険者の「平均標準報酬月額」のいずれか低いほうに保険料率を乗じて決められます。任意継続被保険者の場合は、会社の半額負担はなく全額自己負担となります。
任意継続のほうが有利なケース
「平均標準報酬月額」は、協会けんぽでは28万円です。前年の給与が高い人の場合は、「任意継続」のほうが国民健康保険より保険料が低い場合があります。特に定年退職の場合は、一時的にせよ「任意継続」のほうが得なケースが多いようです。
国民健康保険の場合は、前年所得が低くなれば保険料も低くなります。退職後年金生活になるようなケースでは、初めは任意継続し、時の経過により国民健康保険の保険料のほうが低くなれば、国民健康保険に切り替えても差し支えありません。