こんにちは! 酒田の社会保険労務士 村西です。
先日、山形県社会保険労務士会から、東北南部3県労務管理研修会の案内がきました。
研修のタイトルは 『社労士は労働法をこう使え!』 です。
講師は向井蘭先生といい、山形県出身で私と同年代の弁護士の方のようです。
毎月業界誌に寄稿されていて、私は毎月これを読んでいます。
毎月お見かけするお名前ですし、タイトルも面白そうだと思っていた矢先、書店でこの方の著書 『社長は労働法をこう使え!』 を発見しました。
当然即購入し、その日のうちに読み切りました。面白かったです。すごく面白かったので、今回は、私がハマった内容をご紹介致します。
本当に労働者は弱者なのか?
そもそもこの方の発想は、労働者に痛めつけられている経営者はたくさんいて、労働者は本当は弱者ではないというものです。
タイトルからも分かるように、終始経営者サイドで労働法を扱っています。
それもそのはず、この方は経営サイドに立つ労働専門の弁護士です。
このような方は日本中の弁護士3万人のうち100人程度しか存在しないそうです。
しかもこの書籍は業界向けの専門書ではなく一般向けなので、とてもストレートな表現で書かれています。
モンスター社員とか、ぶら下がり社員など、まず用いられている表現が魅力的です。
転職の度に意図的に解雇を誘導し、迷わず仮処分を申し立て、これを繰り返すことで働かずに生活している、まるで職業が仮処分といえるような人がいる話など、今回は読んでいてゾッとする部分も多くありました。
解雇→仮処分→敗訴のフルコースの代金は数千万円
解雇をめぐって労働者と争い、最悪の場合を想定すると、二審敗訴まで2年くらいと、大体2千万円くらい覚悟しなければならないそうです。
これを、まるで提供される食事のメニューかのように 『フルコースの代金』 として表現しています。
地獄のフルコースを味わうのだそうです。
中小企業の管理監督者は都市伝説
なるほど、それは言えると笑ってしまいました。
管理監督者とは、労基法41条に該当し、時間管理のない管理職のことです。
こういう方は、多くの会社で課長以上と考えていると、いつかのブログで書きました。
一般的にはそういう認識があるのですが、裁判でこの扱いが認められた例はごくわずかです。
時間管理がなく、人事や採用の権限を持ち、経営に参画し、それなりの待遇を受けていて、経営者と一体的な立場の 『労働者』 など、実はどこにもいないということです。
法人役員は労働者ではありません。
日本マクドナルド事件では店長でも該当しないとなって、結局は金で話を付けました。
厚生労働省がこれにより、管理監督者の判断基準として、まったくあいまいで掴みどころのない内容で通達を出しています。
まるで都市伝説です。
就業規則はブラックボックス
就業規則は内容が 『合理的』 でない限り効力はないとされるところ、実際にこの合理的であることを確認しようとすると、裁判によるほか手段がないということです。
例としては、『懲戒解雇のときは退職金を支給しない』となっている就業規則は一般的であり、特に合理性を欠くとは考えられませんが、裁判所は懲戒解雇は認めつつ、事例によってはこれを 『特に悪質な場合は』 と限定して読み変えることがあるのだそうです。〇〇万円くらいは払いなさいと。
一方で、会社側でひな型をそのまま使った場合のように記載漏れや記載ミスがあったとしても、そこは会社の言い分を聞くことはないそうです。
会社が作った就業規則が通用するかどうかは結局裁判で争ってみないと分からないということで、まるでブラックボックスのようだとしています。