こんにちは! 酒田の社会保険労務士 村西です。
月額の基本給に〇〇時間分の残業代が含まれるから、その時間を超えない限り残業代は払わないとする会社があります。ちょっと強引な気はしますが、多くの場合はコンサルタントとか外部の助言があってそのような説明になっていて、労使共に労働法規が全然分からない場合は何となくそんなもんかなと納得できている場合もあります。
しかし、それが労働者に対して口頭でそう説明するだけで、賃金規程に根拠もなく、通常の労働に対する対価と、残業〇〇時間分の割増を含んだ対価がそれぞれいくらなのか判別できない場合が多いです。
そのような場合は〇〇時間分の残業代は法定の残業代と認められず、〇〇時間分の残業代も通常の基本給とみなされて、全部を含んで計算された残業代を別途支払う必要があります。
賃金の基本は時間給です。月給であっても時間給に分解しないと本来そのような説明はできません。
たとえば、月給30万円だと時間給に分解すれば1時間当たりいくらなのか。それは所定労働時間による訳ですが、そもそもそれが契約上どうなっているのか分からないケースもあります。
労働基準法によると、一日8時間週40時間が法定労働時間ですから、月給を時間給に分解するには、月給÷173.8・・・時間の計算で算出できます(365日×40時間÷7日÷12カ月)。ただし、労働基準法は最低限度の労働条件を定めた法律なので、この計算方法を強制してはいません。とはいえ、これがスタンダードな計算方法といえます。
これによって1時間当たりの対価を計算して、法定労働時間当たりの対価はいくらで、それを超える時間外労働に対する対価がいくらなのか示す必要があります。
これを数字で示すことができて初めて固定残業代の設定ができる訳なので、結局は通常の残業代計算はしなければならないということになります。〇〇時間を超える残業代は別途払うことになっているのですから。また、基本給ではなく何かの手当に代えても同じことです。たとえば「営業手当」が残業代見合いだとしても、それは何時間分の対価なのか、契約上労働者に示す必要があります。
これが説明できないと、ハローワークによる求人申し込みすら困難となり、応募者も集まらないでしょう。