「念書」の効力とは?

2018年7月19日

こんにちは! 酒田の社会保険労務士 村西です。

本日、顧問先様からご相談の電話がありました。電話では「ねんしょう」の「こうりつ」についてご相談と聞こえたので、「燃焼の効率」のことかと勘違いし、うちは自動車工場でもメーカーでもないので電話お掛け違いでは? と思ったのですが、その先聞いていくと意味が分かりました。

「念書」の「効力」だそうです。

労働法規に「念書」という用語がないので法的な意味は私も分かりません。しかし、さらに先を聞いていくとこれも意味が分かりました。

要するに、従業員に業務上必要な資格を取らせるために会社がその費用を負担する代わりに、その従業員は数年間は転職しないという「念書」を書かせるに当たってその効力を知りたいのだそうです。そういう意味か。それなら少しアドバイスできそうです。

まず、基本的に会社が負担すべき教育とか研修に掛かった費用は会社負担です。これを退職という事由に対して損害としてその額を予定するならば労働基準法16条によってできません。

「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。」(労基法第16条)

賠償額の予定であって、実際の損害額を請求してはならないとはなっていません。でも、会社が負担すべきそのような費用が損害額でしょうか。

参考となる考え方としてご紹介したのは、東亜交通事件(大阪地判平21.9.3)です。

タクシー乗務員の募集において、2種免許取得や支度料など合計約50万円を会社が労働者に貸し付け、乗車日数800日を返還免除の条件とした事例です。

返還免除であって、返還後の転職は自由です。労働者には職業選択の自由があるので当たり前ですね。

この事例では、この50万円は労働の対価としての実質を備えておらず、消費貸借契約の申し込みであるとされました。そのうえで乗車実績により返還義務を免除することが実質であれば労基法16条の違反ではないとされました。「念書」とかの話でないですよね。

 

 

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