こんにちは! 酒田の社会保険労務士 村西です。
先日久々に解雇に関するご相談がありました。このところは、労働者が出勤しなくなって連絡が取れないとか、求人を出して応募者が来ないから労働条件を見直したいなど、解雇とは無縁のご相談が多かったです。
今回はちょっと特殊なケースです。その特殊性は書いたらまずいので書きませんが、労働者の能力不足による解雇です。
今回は、これまでの事業内容とは違い、事業主様も初めて経験する業種で、その主たる職種のエキスパートを募集しました。いわゆる職人です。職人を募集したのに腕を見抜けなかったとでも言いましょうか。初めてなので職人の腕なんか見抜ける訳ありません。教育しようにもできません。というか、その技能をスタッフに指導をさせるために募集したのですから。
ところが、現場のスタッフから苦情が来て、その責任者からその教育担当の職人を変えて欲しいと言われたらしいです。
そこで、事業主様としては解雇を考えたようでしたが、解雇予告手当を支払えば解雇できると思っていたらしいのです。ところがご存知のように、解雇は、解雇予告手当を支払えば自由にできることではありません。
「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」(労契法16条)
さらに17条
「使用者は、期間の定めのある労働契約(以下この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。」
今回はこの両方の規制が掛かります。かなり高いハードルになります。解雇予告手当どころの話では済みません。
能力なんて雇って働いてもらうまで分からないし、それが事前に分かれば苦労しない。その結果能力がなかったとしても解雇できないとすれば困ったものだ。
そのようにおっしゃっておられましたが、私からすれば、これまでの判例の蓄積によって確立された解雇権濫用法理ですが、ようやっと法律になったのは結構最近のことです。これによって世間に浸透したかといえばそうでもないのか、という印象です。
このケースの場合、労働契約を締結する際、能力に関しては単なる期待ではなく、それが労働契約の内容になっていなければならず、その能力不足により労働契約の目的が果たせないことは使用者が立証しなければならず、それができて初めて解雇できると考えます。
労働契約継続中は使用者が「強」、解雇してしまったら使用者は「弱」労働者が「強」、になるケースがほとんどだと思います。